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東大からMITへ半年留学して分かったこと

2019年01月21日

大学4年生の後半、2018年の8月から2019年の1月にかけて、私は東大工学部とMIT(マサチューセッツ工科大学)の交換留学プログラムに参加していました。 この交換留学は今年で3年目のプログラムで、今回は計5人が東大から派遣されました。 向こうではMITの学部生と同じ寮に住み、同じ授業を受けることができました。 MITでの様子についてざっとまとめておきます。

留学関連記事まとめ

この留学についてはこのブログのあちこちで書いているので、それらへのリンクを集めておきます。

経緯

2017年末に交換留学プログラムについて知り、応募のための準備を始めました。 一年間の長期交換留学だと1年以上前から準備する場合が多いので、約半年前からの準備でも何とかなるのは一学期間程度の中期留学のメリットだと思います。 応募に際してIELTSまたはTOEFLのスコアが必要で、IELTSは以前受けていたのでそのスコアを使えました。 結局、合格が決まった後にTOEFLも受けさせられましたが。

留学をおぼろげにでも考えている人は、今のうちにIELTSかTOEFLを受けておくのがいいと思います。 どちらも受験料が高額で、試験対策もなかなか厄介ですが、今後行きたいプログラムが見つかった際は、すぐに応募できるので安心です。

こちらのマクレガー寮に住んでいました。 MacGregor House MITの学生は寮で過ごしている間もたくさん勉強しているのだろうとは想像していましたが、まあ確かにその通りでした。 それでも、時にはみんなで映画をみて楽しんだり、雑談したり、メリハリをつけて生活しています。

留学前: アメリカの大学では、寮生活でのresidential educationとpeer mentorshipによって日々お互いに議論を交わし、高め合いながら過ごしています

留学中: 『あいつ包丁持ってないからバターナイフでクッキングしてたらしいよw』という話で一通り盛り上がる

— Yasu (@JeSuisYasu) November 9, 2018

30人ほどのエントリーと呼ばれるグループに分かれていて、それぞれのエントリーの住人同士は大きな家族のような関係です。 ラウンジで一緒に過ごしたり、誘い合って夕飯を食べにいったりします。 また、各エントリーにはGRT(graduate resident tutor)という大学院生メンターが住んでいます。多くの場合、カップルで住んでいます。日頃から生活や勉強について相談できたり、トラブルが起きた時はまず最初に面倒を見てくれます。 E Entry

Saturday Night Live鑑賞会

食事

ミールプランという、食堂の回数券のようなものを買うことができますが、1食あたり約10ドルと、そこまで安くはありません。 それに加入していなくても、入り口で13ドル払えば入れます。 マクレガー寮では加入が任意だったので、私はミールプランに入らず、基本的に自炊(主に和食)でまかなっていました。

紙も食べ物も必要ない未来世界 pic.twitter.com/FTfXcQhryk

— Yasu (@JeSuisYasu) September 30, 2018

また、アメリカにはSoylentという「完全食ドリンク」があります。これを1日5本飲めば、1日分の栄養・エネルギーを摂取することができます。これのおかげで、忙しいときも食いっぱぐれることなく過ごすことができました。 ちょっと食事が足りないと感じた時に追加で飲んでおいたり、時間がない時に朝ごはんとして飲んだり。

週末には友達と一緒に料理する和食会を開いて、色々と楽しかったです。

それと、free-food mailing listという、余った食料を宣伝するメーリスがあって、それもたまに使っていました。

イベントで余った食べ物があったら連絡する用の大学のメーリスがあるけど、それにメールが流れるとポケモンGOよろしく人が殺到する。

— Yasu (@JeSuisYasu) September 21, 2018

あとは友達と外に食事に行ったりもしたので、結局留学中に自炊をした日は半分もないです。

授業

Undergraduate Research Opportunity Program

MIT生のほとんどが、在学中に一度はとる授業です。 研究室インターンシップのようなものです。 興味がある研究を見つけて、リサーチャーに直接連絡をとるなどして申し込んで受け入れてもらい、実際の研究活動に関わります。 単位または給料をもらうことができます。

私はMITで行われているロボットの研究を一通り調べて、興味があって、なおかつ自分が貢献できそうな研究を探しました。 このUROPで、ロボットを動かすプログラムを書いたり、制御モデルを改善したり、広く深く関わることができました。 共著で論文を出すこともできました。 留学中はこれにもっとも時間をかけていました。

この研究についてはこのブログのあちこちで書いています。

2.013 Engineering Systems Design

Ionobotという、電離層を観測するための無人船を、13人の学生のチームで設計するという授業でした。これについては、こちらの記事で詳しく書いています →無人船をMIT生たちと13人で設計して分かったこと

16.410 Principles of Autonomy and Decision Making

無人システムが、自律的に動くために必要なアルゴリズムなどを学びました。 幅優先探索、深さ優先探索を代表とした様々な探索アルゴリズム、マルコフ過程などの確率的なプロセス、拘束条件下で関数を最適化する手法などを扱いました。 授業はスライドを使った講義形式でした。 院生向けにも開講されている授業でしたが、学部生も受講していて十分ついていけるレベルでした。

受けていた中では唯一の講義形式の授業で、毎週教科書を読んでくることを課されたり(毎回ものすごい分量で、最初は頑張って読んでいたのですが、途中からちゃんと読まなくても授業についていけるようになっていることに気がついて読まなくなりました)、毎週の授業で学んだアルゴリズムを実装するプログラミングの宿題がありました。

航空宇宙の自動制御の授業をとったら、ブラックモアさんも昔同じ授業を取ってたそうで「卒業生の業績」として『ファルコン9ロケットの着陸制御』が紹介されて、おおーってなってる https://t.co/YuVS035F9n

— Yasu (@JeSuisYasu) September 5, 2018

Engineering Innovation and Design

MITでひとつだけ楽単っぽい気楽に受けられる授業とってる、宿題ほぼないし、毎授業オレオを配ってくれるし今日は先生が突然ワインを開栓しはじめたし()

— Yasu (@JeSuisYasu) October 23, 2018

課外活動

Bose challenge

オーディオ機器メーカーのBoseの製品を用いたハッカソンに参加し、優勝することができました。 フィリピン出身で香港大学に通う留学生と、韓国出身でメディアラボに所属するHCIのリサーチャーとチームを組んで出場しました。

新型のヘッドホンが配られて、それを用いて「人々の暮らしを向上する」製品を2週間以内に作り、動画でプレゼンする、という課題でした。 このヘッドホンにはジャイロやコンパスが内蔵されていて、向いている方向が分かるので、まるで音源が自分の周りを動いているような立体音響が実現できます。

Boseが力を入れているフィットネス分野での製品を作ろう、ということになってこちらのRunner’s Highというアプリを作りました。 ランナーにとって自分のペースを目標に合わせることは大事なものの、特に初心者だとそれが難しい、という問題を解決しようとしています。 走ると、自分の横に音源が動いているように聞こえるのですが、その音源が目標のペースで動いてくれます。 なので、音が自分の前方に聞こえ始めたら追いつくために少しスピードアップする必要があるし、後方から聞こえてくればペースを落とさなければなりません。 音源と併走するようにペースを調整することで、音声案内などにわずらわされることなく、自然と目標のペースで走れるようになる、というものです。 私がアプリのプログラミングを担当、他の2人が動画の企画、撮影や編集を担当しました。

私たちの製品は最優秀作品に選ばれ、賞品としてBoseのノイズキャンセリングヘッドホンをいただきました。

Rocket team

こちらにも所属していました。 小型ロケットの設計・製造・打ち上げを行っている部活です。 なんと、2020年までに宇宙空間(上空100km)に到達することを目指しています。 現在は、それに向けての試験飛行の準備をしています。

私はペイロード部(ロケットの先端)の振動を測るための観測機器の設計をしていました。 モデルロケットで100kmも上空に打ち上げようとするとかなりの初速が必要になるので、空気抵抗による振動が無視できなくなり、最悪の場合ロケットが分解する、などということもありえます。 そもそも心配するほど振動が起きるかも分からないので、試験飛行の際に正確に振動を測定する必要があります。 それに応じて、最終的な機体の設計も変わってきます。

NASAの50年代のレポートを読んで起きそうな振動の周期や振幅の見当をつけて、加速度センサーを選定し、高速で測定できるような回路を設計していました。

就活

MIT Career Fair

授業が始まって数週間した頃に、MIT生のためのキャリアフェアが開催されます。数百の大小様々な企業がやってきて、学生たちがこぞってインターンシップや就職を目当てに各ブースをまわります。 詳しくはこの記事に。

ボスキャリ

有名な、(主に)日本人向けの就職イベントです。11月に行われ、全米の日本人学生が集まるくらいの勢いです。 この時期は、ボストンの街を歩いているだけであちこちから日本語が聞こえてくる、それほど大きなイベントです。 これのためにわざわざ日本から飛んでくる人もたくさんいて、実際私の留学経験のある友達も日本からボストンに弾丸日程でやってきて、内定もしっかりと2つとっていました。 私はこれをきっかけに、チームラボでのインターンシップに参加できることになりました。

さいごに

私以外の東大からの留学生はみんな3年生で、今までの参加者も大半は3年生だったので、4年生になって留学したところであまり得られるものはそう多くはないのではないか、と心配していました。 確かに、既に東大で授業を一通り受けているので、MITで専攻分野についての授業を受けると内容の重複が避けられず、あまり新しく学べることは多くありません。

このように心配していましたが、4年生なりの留学を経験することができたと思います。 全く無駄ではないどころか、エンジニアとして、研究者として、成長することができたと思います。 講義形式の授業をあまりとらないかわりに、グループで一つの大きな工学的なプロジェクトを完成させるというプロジェクトベースの授業をとったこと。 そしてUROPに参加し、ラボのリサーチャーたちと研究を進められたこと。 今まで学んだ分野の知識を元に、それを応用しながら実践する体験をすることが出来ました。

私は2015年入学なので、2019年4月卒のはずです。しかし今年は卒業せず、留年することにしました。 その事情についても書いておきます。 この交換留学は一学期間ですが、その中期留学のメリットとして「留年せずに卒業できる」ことが挙げられます。 たしかに、東大で所属している研究室の先生には、留学開始までに卒業研究に目処をつけ、終了後に一気に卒業研究と卒業論文を仕上げることで、予定通り卒業すること自体は十分可能、と説明していただけました。 しかし私は、2月から行っていたコネクテッドロボティクスでのインターンシップでソフトクリームロボットを作り始めていて、それの完成までインターンとして開発に関わり続けて見届けたい、と思っていました。 インターンシップと、(通常の2倍のペースでの)卒研を同時に行うのは困難と判断し、私は「2018年度はインターンシップとMIT留学に費やし、留年した上で2019年度の一年間かけて卒業研究を行う」という計画にしました。 実際、インターンシップの結果としてハウステンボスにロボットを納入することができ、留学の方も色々な成果を出すことができたので、計画の前半はうまくいったと思っています。



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