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まるで生きているような彫刻を創り出す芸術家、Server Demirtas

2019年10月20日

まずはこちらの作品の動画を見てみてください。骸骨のような風貌の人形が布を被り、不安そうに顔を覗かせます。この動画を初めて見たとき、私は動きの自然さに衝撃を受けました。顔の傾け方、布を身体の前に持っていくときの姿勢など、あらゆる所作に「人間っぽさ」を感じます。

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さらによく見てみると、ケーブル駆動で動いていることが分かります。黒いワイヤーが身体中を伝っていて、これが関節を動かしています。私は大学で、このようにケーブルで身体を動かすヒューマノイドロボット、「腱駆動ヒューマノイド」(人間の筋骨格構造を真似ているという意味を込めて、「筋骨格ヒューマノイド」と呼ぶこともあります)の研究に関わり始めたところです。研究しているからには世界中の主要な腱駆動ヒューマノイドは調べようとしていました。しかし、このロボットは見たこともありませんでした。それでも、今まで見てきたどの腱駆動ロボットよりも人間っぽさを感じる動きを実現しています。

この動画を最初ツイッターで見かけたのですが、製作者を調べていくと、トルコの彫刻家、Server Demirtas氏の作品ということが分かりました。ロボットではなく、芸術作品だったのです。

彼はこのような動く彫刻を作り続けていて、他の作品もこれと同じように、「生きている」動きを実現していました。お金があったら、彼の作品欲しいな… この記事では、彼の作品をいくつか紹介していきたいと思います。YouTubeチャンネルとインスタもあるので、興味を持った方はそちらでもっと他の作品見てみてください。

Bored <退屈>

こちらは全身に肌がついていて、より写実的に人間らしさを追求しています。少女が自分の部屋で退屈して、服を脱いでみたところで何をしよう…と考えているところでしょうか。だいぶ官能的ですね。

全身が同じ柔らかい素材でできているように見えます。シリコンなのでしょうが、ここまで大きなものを成型するのは大変そうです。中に動く構造も納めないといけません。 まるで粘土で人間を作り出し、生命を吹き込んだかのように見えます。

ちなみに動画の最後に、この作品を動かす構造がちょっと写っています。これから、どうやってこれらの作品が動いているか想像することができます。ちょっと野暮かもしれませんが、この作品がどういう仕組みになっているか、私なりの解釈を説明してみたいと思います。

scramble II <スクランブル2>

何人もの像が、前後にゆらゆらと動く様は水中に浮かぶ海藻のようです。ロボットで、別々に動かせる部位の個数を「自由度」と言い(例えば、人差し指は付け根からは3自由度あります)、ロボットの性能評価の一つの指標になるのですが、この作品は何自由度あるのか、見ていても全然分かりません。それぞれの人が別々の意思を持って動いているように感じられます。

どうやって動いている?

モーター以外は、電子部品を一切使わない仕掛けになっています。コンピュータなどは使っておらず、一箇所に動力源がある以外は全て、機械的な構造で動きを作り出しています。 この図の通り、作品の下に隠された複数枚のディスク(工学的には「カム」と呼ばれます)に、動きが記録されていて、それらが周り、ケーブルを引っ張ることで作品が動きます。コンピュータのような電子部品を一切使わず、機構だけでこの自然な動きを作り出しています。

さて、みなさんディズニーランドに行ったことはあるでしょうか。カリブの海賊やホーンテッドマンションなどのアトラクションでは、数々のロボットが動いていますよね。これらは「オーディオ・アニマトロニクス」と呼ばれる人形なのですが、これらも初期は同じような仕組みで動いていました。こちらのビデオの0:33頃に、仕組みが垣間見える場面があります。先ほどと同じように、ディスクを回転してその凹凸をなぞって、ロボットが動いています。ワイヤーを使って動かしているわけではないでしょうが、動きの記録方法の原理は、これらの作品と同じものが使われています。

買えるらしい

M.A.D Gallery

こちらのページで、Server Demirtas氏の展覧会情報が載っているのですが、これによると子供サイズの作品は53000スイスフランで売っているそうです。日本円にすると約580万円ですね。 一つくらい欲しいな、と思って値段を見たら真顔になってしまいました。



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