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コロナ禍真っ只中、スイスに留学する阿呆

2021年01月27日

昨年11月から、私はスイスに留学している。今日でちょうど2ヶ月経つ。チューリッヒ工科大学(ETH Zurich)への訪問研究だ。自分でも、よく来れたな、といまだに思う。出発地の成田空港ではほとんどの店は閉まっていて、飛行機の乗客は十人程度だった。空港から下宿先へ向かうUberは、牛が放牧されている牧場を突っ切ってぐんぐん丘を登っていった。自分は海外経験は豊富な方だが、あまりに異様な状況下での海外留学に際してはじめは不安がかなり大きかった。 最初の数日は、生きるために必死のような状況で、調理器具や食材を揃えたり、入居の手続きをしたりと留学どころではなかった。

2ヶ月経った今、スイス生活にはとっくに慣れた。最近は料理系YouTuberを見ながら自炊のクオリティも上げられてきたし、ドイツ語も初歩の初歩はなんとなく分かってきた。何より、満足のできるほど速く動けてはいないものの、着実に訪問研究の成果も生みつつある。

キャンパスからの景色がとにかく素敵

コロナ禍でも留学しておきたい、という人がこの記事を読んでいるかもしれないので一応書いておくが、今、海外留学に行くのは基本的にやめておいた方がいい。海外留学している張本人が言うのも変なのだが。自分の場合もはや奇跡的なレベルで条件が重なった上で、ある程度は安心して留学できると判断して出発している。初めての中・長期滞在をしようとしても、そもそも入国できなかったり、レストランが閉まっていたりして不便な思いをしたり、外出が制限されたり、観光施設が閉鎖されているのでどこにも遊びにいけなかったり、普通の留学の醍醐味がほとんどない。ワクチンが出回り、コロナが世界的に収まった頃に留学に行くことを目指して、語学なり勉強なりを続けていくのが良いと思う。

キャンパスからの景色がとにかく素敵(雪ver.)

そもそも今は、大学のあらゆる交換留学プログラムが中止されている。今回は、個人留学で応募していて、授業は一切取らずに研究だけ行うという前提での訪問研究としての留学である。

自分の場合、まずは両親に、そして東大で所属する研究室の指導教員に、自分のやりたいことを理解してもらい、この状況下でも留学することを認めてもらえ、応援してもらえたことが第一歩だった。 そもそもどうしてこのタイミングで、スイスに留学するのか。2年前にMITに留学したときに一緒に研究を進めていたポスドクのカッチュマン先生が、2020年の夏からチューリッヒ工科大学の先生となり、新しいソフトロボットの研究室を開設した。ぜひまた一緒に研究しないか、と先生からお誘いを受けていた。私も、MITへの交換留学から帰国して以来、「あの象の鼻のようなソフトロボットはこうしたらもっと簡単に作れて、もっと動けるようになるのではないか」「こう制御したらもっと自在に動けないか」など、色々なアイデアを考えていたので、ぜひ再びソフトロボットに関わって、アイデアを実装していきたいところだったので、とてもありがたかった。コロナが猛威をふるい始めた頃だったので、行けないかもしれないと思いつつ、それに向けて色々と準備を進めていた。(とは言ってもものぐさな自分の性格のせいで、結局かなりギリギリに応募したり、下宿先が決まらなそうだったりと危なかったが、無事留学できているので結果オーライ)

2年前のMITのソフトロボットアーム。最新版は…まだ秘密です!

私は東大では「筋骨格ヒューマノイド」というものを研究している。これもこれで奥が深く、(こないだ提出した論文が国際学会に通ったらまたそれに関する記事も書きたいのだが)通常のロボットではそれぞれの関節に回転するモーターが仕組まれているのに対して、筋骨格ヒューマノイドでは人間の筋肉と同じ原理で、筋肉のようなヒモを引っ張ることで動き、そのためのモーターが体の随所に取り付けられている。普通のロボットよりも、柔軟さなど人間らしい動きを生み出せるのではないか、と期待をされている。

東大JSKの腱駆動筋骨格ロボット、「腱悟郎」

こんなにリアルな見た目だと、なんでもできてしまうのではないかと思うかもしれないが、実際はむしろ、普通の動作をさせるだけでも、従来のロボットよりも複雑な制御が求められる。ソフトロボットも、従来のロボットの制御がそのまま使えるわけではない一方で、従来のロボットよりも柔軟に動くことができる。この2種類のロボットには似通った哲学があるのかもしれない。

今は日々、象の鼻みたいなロボットをひたすら設計し、動かし方を考えている。とても楽しい。遠い先になるかもしれないが、そんな柔らかいロボットアームが机から生えてきて、作業を手伝ってくれたらいいな、とか考えながら、バグや設計ミスに気づいて慌てて対処に追われる。早速、論文も出すことになりそうなのでそれも書き始めなくてはいけない。 修士を卒業したらどうするか、段々見通しがついてきたのだが、その更に先は、まだよく分からない。自分は多分、(少なくとも大勢を)マネジメントするのには苦手意識がある。できれば、手を動かす、実装に近いところでロボットに関わっていきたい。 まあ、2020年に明らかになったように、数年後の世界なんて誰にも分からないので、せいぜい好きなことを進めていって(時折苦しみつつも)楽しもうと思う。



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